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Un indien dans la ville 僕は、パリに恋をする

フランス映画 (1994)

ルドウィグ・ブリヨン(Ludwig Briand)が主演した1994年の大ヒット映画。映画は最初から最後までフランスらしいコメディに溢れている。テンポの良さと、それに負けない密度の濃い「笑い」の連続が、高い人気の秘密だ。同年にノベライズされ、1997年には『Jungle 2 Jungle(ジャングル2ジャングル)』の題名でハリウッドでも映画化された。ただ、こちらの方は、前半こそ原作と似ているが、後になるほどアメリカ的なホームドラマに変身してしまっている。この映画の成功の秘訣は、何といってもワイルドで可愛いミミ・シクの存在。フランス人の両親から生まれたとは信じられないほどの破天荒ぶりは、都会の毒気にあたっても全く影響を受けず、最後まで自然児を押し通すところが面白い〔まさに クロコダイル・ダンディーの少年版〕。ミミ・シクの父親役のティエリー・レルミットの「憮然とした表情」のコミカルな演技も冴えている。ストーリーは、ミミ・シクがパリで異文化と接しながら、自分流を押し通すことによる様々な軋轢〔ミミ・シクは全く気にかけない〕をメインに、父親とその格下の同僚の2人が引き起こす大豆の売買を巡っての騒動をサブに進行し、それにミミ・シクとソフィー(父の部下の娘)との淡い恋が『小さな恋のメロディ』(1971)のように入り込む。それらがモザイク風に組み合わさり、短いカットでだれさせない。唯一の長いシーンは、ミミ・シクがエッフェル塔に登る場面だが、その「登りっぷりの良さ」が見ていて心地よい。残念なのは、これほど楽しい映画なのに、日本では、公開されたにもかかわらずビデオだけでDVDが発売されていないこと。また、海外版にも視聴覚障害者用のフランス語字幕が付いておらず、あらすじでは英語字幕しか使えなかった。  

南アメリカの北端部にある仏領ギニアの山奥に、現地人と一緒に育てられ、現地名しか持たない少年が、初めて会った父と一緒に、父の住むパリを訪れる話。少年の夢はエッフェル塔に登ること。しかし、それだけでなく、20世紀にいながら原始の生活にしか接してこなかった少年が引き起こす様々なトラブルが面白おかしく紹介される。ギャクの連続と言ってもいい。少年の名はミミ・シク。何か重大なことをしようとする場合には、ジャングルにいた時と同じように、顔にペイントを塗り、腰巻1つの裸になり、弓矢と吹き矢を持って外に出る。それがシャン=ゼリゼのど真ん中であろうと意に介さない。パリまで持ってきたペットの毒蜘蛛も活躍する。少年の父はステファン。妻が家出してギニアに去ってから13年。同じくらい「個性的な」女性と結婚することになり、離婚手続きのためにギニアを訪れて、自分に息子があることを初めて知らされる。アジアの商品取引のプロで、旅行中、僻地にいる関係で、大豆の売買に失敗し、大豆の価格が下がったことで負債を抱え込む。だから、パリに戻ったステファンは、ミミ・シクだけでなく、大豆をどうするか、あるいは、婚約者の奇抜な行動にどう対処するかの三重苦で悩む。ステファンの格下の同僚リシャールは、入社以来、ずっとステファンの影を踏んできた(真似をし、迷惑をかけてきた)男。大豆取引での失敗の第一責任者。自分の失敗をカバーしようと、ステファンの命令も聞かずに独走し、それが迷走になった時、マネーロンダリングの道具にされる。それが、ステファンだけでなく自分の家族を巻き込む事態に発展。そのリシャールには2人の子供がいるが、姉のソフィーはミミ・シクより1つ年下。最初は野蛮人と思い相手にしないが、遊園地での蛮勇ぶりを見て惹かれ、最後は、一緒に駆け落ちするまでになる。最後に、ステファンの婚約者シャルロットは怪しげな東洋の神秘思想に心酔している。ミミ・シクとは折り合いが悪く、追い出そうとする。自分の思想をステファンにも押し付けるが、最後には見切りをつけられる。こうした5人が巻き起こす出来事は錯綜し、多岐にわたっているが、それを90分という短い時間の中に無駄なく凝縮し、笑いをちりばめたところに、この映画が大ヒットした要因がある。

ルドウィグ・ブリヨンは、撮影時、映画の設定と同じ13歳。色黒でフランス人とは思えないような顔つきに見えるが、れっきとしたフランス人。ただ、Ludwigという名や、弟のWolfgangという名はドイツ系だ。異母妹のLucréceはフランス系なので、母親はフランス人ではないのかも。ルドウィグは10歳で舞台に立ち、ミュージカル『レ・ミゼラブル』のガヴローシュ役を1年務めた経験があるが、この映画の後は、俳優とは別の道を歩んだ。たまたま2017年の7月12日にフランスのTV 「フランス4」でこの映画が放送され、それを受けて「現在」のミミ・シクに注目が集まり、ネット上でも多くのインタビュー記事が見られる。その中で、一番ミミ・シクを思わせる36歳のルドウィグ氏の写真を添付しよう。その顔立ちは、如何にもフランス人のものだ。
  


あらすじ

タイトルに続き、最初に現れるのが、滝をバックに中洲を歩く少年の姿(1枚目の写真)。この滝は、少年の住む村リポ・リポの岸から遠く望む正面にある。その次が、少年が崖を楽々と登って行く姿(2枚目の写真)。後で、楽々とエッフェル塔を登って行ける背景説明になっている。その後、ジャングルに入った少年は弓矢でトカゲを射抜く。これはパリで鳩を射抜く伏線。そして川をボートで下り(セーヌ川も下る)、最後はジャングルの中で火を焚いてトカゲを焼いて食べている(パリでは熱帯魚やセーヌ川の川魚を焼く)。
  
  
  

一方、パリからベネズエラに飛ぶ飛行機の中では、ステファンが大声で電話をかけている。はた迷惑なことなど意に介さない人間であることがひと目で分かる。使っている携帯は、映画の制作が1993年だとしても旧式で、1980年代の末の製品のように見える。バリバリのビジネスマンの割にはお粗末。会話の相手は格下の同僚のリシャールで、香港市場で4500トンを80万ドルで買い付けた大豆をいつ売るかを、パソコンで東京市場の相場のグラフを見ながら、「まだ、高値を更新してる。もう少し粘れ。指示するまで待ってろ」と話している〔80万ドルで買ったという文言は映画のどこにも出てこないが、後で、ロシア人が買い取る時の価格が80万ドルなので、その金額に合わせた〕。最後に言った言葉が、「離婚手続きが終わり次第、帰国する」。ステファンがベネズエラに向かっているのは、今付き合っているシャルロットと結婚するには、13年前 突然出奔した妻と離婚する必要があり、その妻が仏領ギニアに住んでいるため。ステファンが飛行機を降りると、そこにはベネズエラの弁護士が待っていた。早く帰国したいステファンは、「時間が切迫してまして。判事さんとは、何時に?」と訊く。返事は、「実は、奥さんに ちょい問題が」。「え? 応じないんですか?」。「いやぁ、そうじゃない。離婚申請を、奥さん まだ知らんのだよ。何べん言うても、誰も、郵便局に書類を取りに来ん」(1枚目の写真)。ステファンは、「7000キロも 旅して来たのに? 来月、結婚するんだぞ!」と怒るが、「私、奇跡 起こせないね」といなされる。そして、「カナバヨ行って、奥さん連れてきて、サインさせる。書類できたら、領事館とコネあるから、うまくやるね」。ステファンが、「カナバヨって、どこ?」と訊き、弁護士が指差した地図には、堂々と「AMAZONAS」の文字が〔アマゾナス州はブラジルのベネズエラと接する州。カナバヨは架空の知名だが、仏領ギニアにあるという設定なので、あまりにも ずさん〕。ステファンは、小型機をチャーターして弁護士とそこに向かうことに。カナバヨはひどい雨。地面は未舗装で水溜りだらけ。「心配は要りませんて。雨は止みます」と言うが、土砂降りは続く。村にあった掘っ建て小屋のような郵便局に行き、13年前の写真を見せる。弁護士の通訳で、何週間も手紙を取りに来ていないことが分かる。「どこに住んでるか、訊いて」。返事はリポ・リポ。映画は仏領ギニアで撮影する予定が、雨季のため、ベネズエラで撮影されたが、リポ・リポという村は本当に仏領ギニアにある(北緯3度18分、西経54度3分)。カナバヨからモーターの付いた木のボートでリポ・リポに向かう(弁護士は、「役立たず!」と置き去り)。舟に乗ること3時間でようやくリポ・リポの集落が見えてくる(3枚目の写真)。ステファンは、「いいか? 訊いてくるからな。5分待て!」と言って、舟から降りるのだが…
  
  
  

舟から降りたステファン。全く場違いな服装の白人を見て、子供たちが寄って来る。「白人の女性 探してる。パトリシア・マルシャド」(1枚目の写真)。それでは通じないので、写真を見せる。すると、「パリクー」という名前が一斉に上がる。子供に手を引かれて1軒の藁屋根の小屋に入ると、ちょうど豚のお産の最中なので、「外で待ってて」と追い出される。外に出たステファンは、「豚の方が、僕より大事? あんまりだ。あいつは 結婚して1年で黙って姿を消した。ハガキ1枚 寄こさん。仕方ないから、一念発起して7000キロの旅をして来たってのに、豚のお産があるから外で待ってろだ? とんだ ご挨拶だ」と、誰も分からないフランス語でぶつぶつ。お産が終わり、妻は離婚にOKしたが、「明日は 成人の儀式があって、ムリ」とあっさり断られる。しかも、待っていてくれると思った舟はとっくにいない。ステファンはここで2泊せざるを得なくなる。夜になり、妻が「あなたの 知らないことが」と話し始めようとすると、衛星アンテナを通じてパソコンがつながり、妻が何を話しても馬耳東風で、大豆相場の動きに一喜一憂する。「172、少し下がった」。「妊娠してたの」。「構うもんか。売ってやる」。「あなたの子供よ」。「171か… 下がり過ぎた」。「アマゾンに住むのが夢だったし、ジャングルで子供を育てたかった」。「おーっと、175。もう ひと踏ん張りだ」。「息子に会ってやって。そこにいるの」(2枚目の写真)。「いいぞ、175ドル25… 175ドル75。よし今だ! 売るぞ! やった! 13万ドルを超えるボロ儲けだ!」〔パソコン上のドル/円相場は104.29円。これを信じれば、撮影は1993年8月か1994年の2-6月〕。妻は呆れて離れて行った。ステファンが気付いて追おうとパソコンを離れると、画面に「送信確認」の表示が出るが、ステファンは押し損ねたままバッテリー切れとなる〔大豆は高値で売る機会を逃し、後で暴落する〕。妻は、改めて、「息子の話、聞いてた?」と確認する。「息子って、いったい誰の?」。「あなたのよ。焚火のそばにいる。私が逃げ出した時、お腹には赤ちゃんがいて、ここで育てたの」。自分に子供がいることを初めて知らされたステファンは、「あんまりだ! 正気の沙汰か?」と詰(なじ)る。妻は、「名前はミミ・シク。『猫のおしっこ』 って意味よ。ここでは、自分で名前を選ぶの。尊重してやって」。夜、ステファンはミミに「少し話そう」と声をかけるが、手に鍋を持ったミミは、現地語で何か言うと、近くのハンモックで寝ていた女の子を起こし、鍋を渡してハンモックに入っていった(3枚目の写真、矢印は鍋)。2人はキスすると、ハンモックの中でじゃれ合っている。
  
  
  

翌朝、ハンモックで寝ていたステファンは妻に起こされる。「ミミ・シクが、森を見せるって。待ってるわよ」。「ゆうべ、女の子とイチャついてたぞ」。「だから、お鍋がないんだわ」。「鍋が どうかした?」。「ここじゃ、お鍋は愛のしるし。あの子、もてるのよ」。ミミが岸辺にカヌーを持って来て、父を待っている(1枚目の写真、矢印は、映画の最初のシーンに映っていた滝)。2人は仲良くカヌーを漕いでいく。岸辺に猿がいると、ミミは「バブーン」といい、川に手を突っ込んで「トゥーナ」、鳥のいる空を指して「オーコ」と言う。ステファンは、その度にフランス語で返事をしていたが、最後の、「オーコ、鳥」と腕を振って鳥の真似をした時、ミミは、「違う、オーコはオーコ、鳥はポンポコ」とフランス語で訂正する。それを聞き、ステファンは「待った。話せるのか?」と訊く。「パリクー話してくれた、『狐とカラス』。カラスだまして チーズを取ったキツネの話」。いよいよジャングルに入って行った2人。父が蛇を見つけて怖がると、ミミが吹き矢で頭を射抜く。そして、ぐったりした蛇を持ち上げると、「ブルドゥ、あげる」と差し出す(2枚目の写真)。「怖い?」と訊かれ、仕方なく受け取るが、「これ、毒はないのか?」と訊くと、「あるよ。ブルドゥ 猛毒。体 腫れて、鼻血 ブー」という返事。「これ 死んでるのか? ピクっとしたぞ」。ミミは、「ううん、寝てるだけ」と言うと、蛇をつかみ取り、首を噛み砕くと、「今、死んだ」。ミミは、河原で火を起こし、蛇を焼いて父にも食べさせる。その時、砂地に足指で図形を描き、「あんたの国、これない? 村長さんの首飾り、付いてる形」と尋ねる。「あるとも、エッフェル塔だ。とっても大きいぞ」。「エッフェル塔… ボク 行ける?」(3枚目の写真)。「ああ、いいよ、そのうちな」。「大人になったら、行ける?」。「分かった。大人になったらな」〔「大人」の定義が、フランスとリポ・リポでは違う〕。ミミが「ワカテペ」と手を上げ、父はその手をパチンと叩いて「ワカテペ」と言う〔リポ・リポでは厳正な約束が交わされたことになるが、父に その認識はない〕
  
  
  

その後、ミミは昼寝に入る。すると、1匹のタランチュラが、砂の上に寝ているミミの上に這い上がる。父は、「ミミ、ミミ、動くな!! 危険だ!! 超でかい蜘蛛だ!!」と叫ぶ。すると、蜘蛛はその声に反応するかのうように、結構なスピードで父の方に歩いてくる。「何だよ、おい!! 何で来るんだ!!」と叫べば叫ぶほど寄って来る。ミミは声で目が覚めるが、それが自分のペットの蜘蛛だと分かっているので、父が慌てて逃げまどっているのを笑って見ている。父は、最後に 舟底を見せて漂着している壊れたカヌーの上に逃げる。その先は川しかないのに、蜘蛛は舟底の上にまで上がってくる。父に残された道は川に落ちるだけ(1枚目の写真)。ミミは、起き上がって舟まで来ると、「これ、マイティカ」といって、タランチュラを手にのせ、「わめくと、マイティカ、襲いかかる。いつもは、いい子。もっと悪い子 いる。ククイエ」と言う(2枚目の写真)。「ククイエって?」。ミミが指さすと、それは父に向かって真っ直ぐ泳いでくる大型のアメリカワニだった。父は、「ここは、地獄だ!」と逃げ出す(3枚目の写真、矢印はワニ)。
  
  
  

その日の夜は「成人の儀式」。子供たちがステファンのそばに寄ってきて、「バブーン、バブーン」と呼びかける。「胸毛が猿みたい」なので、これがステファンの「名前」になり、ミミも「パパ」と呼ばず「バブーン」と呼ぶ。「成人の儀式」を受けるのは、2人。そのうち1人がミミだ。この部族では、13歳になると「大人」とみなされる。成人の儀式は、村長が持つ赤く焼けた枝を握るというものだ。ミミが枝を握ると手から煙が出る(1枚目の写真)。かなりの火傷のはずだ。母は、村長の言葉を翻訳し、「ミミ・シクは村の誇り。父親のあなたも、誇りに思えって」と言う。その時、ミミが寄ってきて、「バブーン、大人になった。明日、村長さんと一緒、パリ行く」と言い出す。何のことか分からなくて、妻に「パリって?」と訊くと、「パリに連れてくって、約束したでしょ」と教えられる(2枚目の写真)。「待てよ、そんなの問題外だ。こんな連中をパリへだと? 明日は、君とカラカスの領事館に行く」。そして、ミミには、「鉄の鳥に乗ってパリに帰る」と鳥の真似。ミミは「ワカテペした」と迫り、母は「約束 破るの?」と責める。「いつか連れ行くとは言ったが、明日は不可能だ。話にならん! 忙しいし、結婚も控えてる」。「明日… 不可能… 忙しい… そんな言葉、ここには ないのよ! この子だって理解できない」。「君こそ、偉そうなこと言えた柄か! こんな育て方して何てひどい母親だ! 児童相談所に訴えてやるぞ!」。「突然来て、何よ?! 息子との約束一つ守れない男が!」。結局、ミミ1人を、パリに連れて行くことに。
  
  

空港に着いたステファンを待っていたのは、リシャールの衝撃的な言葉。「今朝、149ドルにガタ落ちだ〔149ドル×4500トン≒67万ドル。購入額80万ドルから13万ドルの下落→約1350万円の損失〕。最低最悪、もうお終い」。「昨日、売ったんだろ?」。「売ってない?」。「もちろんだ。売りの確認、しなかっただろ?」。そして、リシャールは、「社長は、俺たちで穴埋めしろと」と絶望的な状況にあることを伝える(1枚目の写真)。この写真で注目して欲しいのは、2人の服が、ネクタイに至るまで全く同じという点。制服ではない。これは、能力のないリシャールがステファンの真似をして少しでも近付こうとしているため。これ以後の写真でも、2人が同時に映っている写真は7枚以上あるが、着る服は違っても、2人の服装は常に同じ〔見ているのは面白いが、いざ実行しようとしても、朝、ステファンが何を着るかをリシャールが知るのは不可能だと思うが…〕。リシャールは、ミミを見て、「どこで見つけた?」と訊く。「南米のジャングルで育った パトリシアの子さ」。「でも、シャルロットは どうする?」。ステファンは、2人を連れて、エッフェル塔近くの豪華なアパルトマンに向かう〔ノベライズされた本ではエリゼ・ルクリュ(Elisée Reclus)通りとなっているが、これは明らかな間違い。映画のずっと後で、朝ゆっくり目に起きたミミに、父が、「太陽が塔に着いたら、1時間」と時間の経過を教えるシーンがある。午前10~11時ごろエッフェル塔の方角に太陽が見えるためには、塔の北北東(セーヌ川の対岸)にいる必要がある。エリゼ・ルクリュは塔のすぐ東側なので問題外。2枚目の写真は、ミミがエッフェル塔を見ているシーンだが、ここで注目すべきは、正面に延びるセーヌ川。そこには、一番遠くのコンコルド橋からアレクサンドル3世橋~アンヴァリッド橋~アルマ橋までが一直線に映っている。ということは、この撮影地点は、セーヌ川右岸の屈曲点、恐らくは、セーヌ川に面したMona Bismarck American Centerの1つ西にある建物の屋上からの撮影であろう。エッフェル塔からの直線距離は500メートル弱の場所だ〕。ステファンは、リシャールにミミを任せて、1人でシャルロットに会いに行く。ミミを連れて来たことを事前に知らせるためだ。ステファンが部屋に入って行くと、シャルロットはウェディング・ドレス姿で出迎える(3枚目の写真)。そして、自分が師事している怪しげな東洋の神秘思想の導師から結婚の日を決めてもらったと 嬉々として話す。ステファンは離婚に時間がかかるのでその日程は無理だと言う。そして、息子を連れて来たことも。名前の由来は、「あっちじゃ、自分で選ぶんだよ、好きな名前を。『コーヒーカップ』 とか『庭のイス』とか、何だっていいんだ」と話す。その頃、待っている車の中では、サンバイザーに止まった蝿を、ミミが小さな吹き矢で仕留める。近くを飛んできた細い棒に驚くリシャール。ミミは矢を引き抜いて蝿を見せ、「マイティカにやる」と言う(4枚目の写真)。リシャールは、それがタランチュラだとは思いもせず、「そうか、きっと喜ぶぞ」と褒める。
  
  
  
  

父のアパルトマンに入ったミミ。真っ先にやったことは、バルコニーの石の手すりの上に立って、間近に見えるエッフェル塔を「バブーン、バブーン!」と叫んで指差したこと。バルコニーに立つ場面はCG合成ではないと映画パンフに書いてあった。危険な場所に立っているので、父は、「ミミ、下を見るな! 早く 降りるんだ!」と必死だ。この時点で大豆相場は143ドル〔約1630万円の損失〕。リシャールは、「最低最悪だ! また下がった。もう手が付けられん!」と、これまた必死。シャルロットはミミの前に姿を見せると、「私、シャルロット。『コーヒーカップ』 とか『庭のイス』って呼んでいいのよ」と、さっきのステファンの言葉をくり返す。シャルロットが後ろを向いて「ほんとの原始人みたいね」とステファンに話していると、ミミは、「猫は 食べるの好き。だから、たくさんエサやる。太ったら食べる。とっても、おいしい」と言う(1枚目の写真)。ミミがキャットフードを食べさせているのは、シャルロットが大切にしている猫。「まるで、野蛮人じゃないの! 猫ちゃん、そっちは危険よ」と猫を奪い取る。シャルロットは、信仰するエセ宗教の主張する「チャクラ(宇宙のエネルギーへの扉)」が閉じると言って導師に会いに出て行く。ステファンがふと気付くと、ミミが残ったキャットフードを嬉々として食べている。「これ、とても うまい」(2枚目の写真)。リシャールは、「楽しいけど、そばにいられると困る。会社にだけは連れて来ないでくれよ」と言うのだが…
  
  

場面は、会社に切り替わり、ミミも同行。秘書の部屋で待たされている。社長室からは、「確認を 忘れるからだ!」という叱咤の声。ミミは、秘書が気に入ったので、「これ あげる」と鍋を渡そうとする(1枚目の写真)。「気持ちは嬉しいけど、お鍋はウチに沢山あるの」。「そんな たくさん?」。「そうよ、いろんなのがね。大きいのもあるし、中くらいのや小さいのも」。ミミがニヤニヤしながら「男好きだね」と言う。社長室からは、「無能だったと謝れば済む、と思っとるのか?」との怒鳴り声。秘書はライターでタバコに火を点けようとし、ミミはそれを物珍しげに見ながら、「火?」と訊く。「そんなに 珍しい? じゃあ、あげる」(2枚目の写真)。社長:「今日の相場で、損失はまた膨らんだ!」。その大声に、ペットのタランチュラが反応し、容器から出て社長室に入って行く。「今日は140ドルでも、明日になれば120ドルだ!」。そして、新聞を投げ捨てる(3枚目の写真)。新聞を拾おうと屈んだステファンは蜘蛛に気付く。ステファンは蜘蛛を何とかしようと必死になる。会話は社長とリシャールの間で続く。「分かってるじゃないか! 自分たちが、崖っぷちにいると!」。「破局です」。「責任感があるなら、どうすべきか分かってるな?! 損害は自弁しろ! 尻拭いはしてやらん! そうなりたくなかったら、必死に売って来い!」。蜘蛛がどんどん社長に近付くのを見たステファンは、自分で奇声を上げて秘書室に蜘蛛を呼び寄せ、ミミに回収させる。
  
  
  

その日の夜。アパルトマンでは、ステファンとシャルロットの間では険悪なムード。「世話はするけど、納得いかないの。2年前、子供が欲しいと言ったら拒んだでしょ。2人だけで暮らしたいとか、重荷になるとか、キャリア第一だとか。これでも、傷付いたのよ。そこへ、前の奥さんの子供を連れてきたのよ。言っちゃ悪いけど、山猿みたいな子。しかも、離婚の手続きも中断したまま」。「戌年に結婚したいと言い出したのは君だ! だから僕は、南米の奥地まで足を運んだ! ところが、帰ったら4500トンの大豆のせいで会社はクビ寸前だ! おまけに、野生のガキまで!」。バルコニーにハンモックを吊り下げて寝ているミミを見て、「どうすりゃいいんだ?」と呟く父。明くる日の朝。隣の棟のアパルトマンのベランダで、老婦人が寄ってきた鳩に、「ポッポちゃん。お腹空いたでしょ、いらっしゃい」と餌をやっている。そこ向かってミミの弓矢が向けられ(1枚目の写真)、放たれた矢は、舞っていた鳩を射抜いて壁に突き刺さる。驚愕する老婦人(2枚目の写真)。騒ぎを聞き、「ミミ、何をした?!」と飛んできた父は、急いで窓を閉め、「ここじゃ、ダメなんだ。鳥なんか食べない。食い物ってのは…」と言うと、朝食用のシリアルの箱と牛乳パックを持ってきてミミの横に置き、「これが朝食だ」(3枚目の写真)。一口食べたミミは、吐き出した。
  
  
  

そこに、リシャールから電話が入る。「大豆の買い手がついたから、5分後に玄関で会おう」。父は、ミミに、「急用で、ちょっと出かける。仕事だ。ここで待っててくれ」と頼む。「ボクも いっしょ、バブーン」。「ダメだよ。これは 義務なんだ」。「なぁに、『ぎむ』って?」(1枚目の写真)。「義務ってのはだな、つまり… したくない時に、仕方なくやることさ」〔伏線〕。「ボク、エッフェル塔 行く」。「今日は無理だ。日曜に行こう。シャルロットといるんだ。優しくするんだぞ。動物は殺すなよ〔猫のこと〕。狩りもダメ〔鳩のこと〕。さ、頑張れ! バブーンすぐ戻る」。父が出て行き、ミミが蜘蛛に餌をやろうとすると姿がない。ミミは室内を捜しまわり、シャルロットの寝室にも入って行く(2枚目の写真)。「マイティカ」と何度も呼びながら 下に隠れていないか、いろいろな物を待ち上げてみる。シャルロットが体にかけていたシーツもめくり、驚いて飛び起きたシャルロットに、「脚 とても きれい」(3枚目の写真)。シャルロットは、「ませた ガキね」と言ってバスに閉じ籠もる。ところが、電話がかかってきたので、ドアを開けて外に出ようとすると、ドアの脇の壁にはタランチュラがいる。シャルロットは悲鳴を上げて、再びバスに閉じ籠もる。一方、ステファンは、リシャールが運転してきた車に乗っていたイワノヴィッチ弁護士と会う。弁護士の話では、投資家はロシア人。そして3人はロシア人の泊まっているホテルに向かう。
  
  
  

ミミは、一刻も早くエッフェル塔に行きたいので、こっそりアパルトマンを抜け出す。先ほど、シャルロットの部屋を覗いた時、顔に赤いペイントを塗っていたのは、外出のため。リポ・リポの戦士の格好で、エッフェル塔を見に行くためだ。そして、凱旋門をバックにシャン=ゼリゼの真ん中を歩くミミ(1枚目の写真)。ミミは、道端で「金くれよ。腹減った。食べ物を」と物乞いをしている若者に、「これ、食べ物。たくさん 食べる」と言って、今朝狩った鳩を渡す(2枚目の写真)。そして、メトロの換気口へ〔初期の地下鉄は自然換気式だった〕。換気口からは、列車が通る度に走行風が上がってくる。物珍しげに近づいていったミミは、吹き上がる風に興味津々(3枚目の写真)。有名な『七年目の浮気』(1955)のマリリン・モンローのスカートが舞うシーンへのオマージュだ。しかし… である。なぜ、ミミは凱旋門からシャン=ゼリゼに行ったのか? 映像的には面白いが、アパルトマンからエッフェル塔まではセーヌ川をはさんで目と鼻の先だ。街路に沿って歩いても700メートル弱しかない。しかし、アパルトマンから凱旋門に行くには、エッフェル塔とは逆方向に1.5キロも歩かねばならない。しかも、そこからシャン=ゼリゼを歩いても、エッフェル塔からは離れていくだけだ。エッフェル塔に行きたいだけの少年が、そんなことするだろうか? つまり、これは、映像的な面白さを狙った「やらせ」でしかない〔面白いから、ま、いいか…〕。一方、3人はロシア人が居住している安ホテルに到着。ドアが開くと、出てきたのは、如何にもお人よしといった感じの男(4枚目の写真、左端)。部屋に3人を引き入れた男は、「私、フランス語、下手。ペトーシュカ、通訳する」と言って、弁護士に通訳させる。それにしても、実勢価格60万ドルほどの大豆を、将来値上がりするからと言って、80万ドルで売り付けるのは大した心臓だ。映画では何の説明もないが、ノベライズでは、気密情報で相場が大反発すると嘘を付き、相手を納得させている。
  
  
  
  

ここから、私のお気に入りの、エッフェル塔を登るシーンが始まる。ミミは、シャン・ド・マルス公園の南東側から塔に近付いて行き(1枚目の写真)、塔脚を第1展望台(高さ57.6メートル)に向かって登り始める(2~5枚目の写真)。そして、第1展望台にある人気のレストラン、ル・ジュール・ヴェルヌ(Le Jules Verne)で食事をしている日本人観光客の目の前を登り(6枚目の写真)、第2展望台(高さ115.7メートル)を目指す(7・8枚目の写真、鉄骨からぶら下がって危なそう→スタントなしとは凄い)。最後は、第2展望台のすぐ上にある梁の上に座ってパリの俯瞰を楽しむ(9~11枚目の写真)。第2展望台のすぐ上というのは、10枚目の写真で、頂部に見える第3展望台の下の方で中央のメイン鉄骨が逆Y字型になっているが、その分岐点から5層下にいることから確定できる。最後の11枚目の写真で、正面真下に見えているのはシャイヨ(Chaillot)宮。
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  

ロシア人の安ホテルでは、取引き成立を祝して乾杯中(1枚目の写真)。そこに、警察からステファンに電話が入る。ミミが不法侵入で捕まったのだ。警察署までミミを引き取りに行ったステファンは、「留守番してろって、言ったのに!」と叱り、「自由にさせてやりたいが、子供の監督は親の義務だ」と言ってしまう〔以前、父は、義務の意味を訊かれ、「したくない時に、仕方なくやることさ」と説明していた〕。ミミはこの言葉に強く反撥する。「ぎむ?」と耳を疑うように言うと(2枚目の写真)、たまたま信号で停車していた車のドアを開けて逃げ出す。父が、「ミミ!」と呼ぶが、ミミは、向かってくる車のことなど構わずに、駐車している車で狭くなった車道を走る。「『ぎむ』なんだ!」と叫びながら。3枚目の写真で、ミミの後ろに見えている車は、駐車中ではなく、走っている車。だから、彼は道の真ん中を走っていることになる。
  
  
  

ステファンは、車を放置したまま、必死でミミの後を追いかけて捉まえると、「ミミ、君のことは、とても気に入ってる。だが、ここは都会だ。分かるか? あんな風に車道を走るな。危険だろ。塔に登るには、お金を払って切符を買う。鳥は殺しちゃダメ。そんな恰好で出歩いちゃいけない。分かるよな?」と諭すように言う(1枚目の写真)。ミミも、これには納得したようだ。車に戻った2人に、後ろのドライバーが、「邪魔だ、早く出せ!」と怒鳴ると、車に乗りながらステファンが「うるさい!」と言い、すかさずミミも、助手席から身を乗り出して「うるさい!」と怒鳴る。そして、「これでいい?」。父は、ミミを子供服の店に連れて行き、ジャンパー、ジーンズに運動靴を買う。ミミにとって一番の問題は、圧迫されて足が痛いこと。「足、覚えるの遅い。とても痛い」(2枚目の写真)。「心配するな」。
  
  

一方、アパルトマンでは、バスに閉じ込められた形のシャルロットが、ドアの下にタオルを詰めて、タランチュラが入って来ないよう必死で防いでいる(1枚目の写真)。そこに到着した2人。ミミは、さっそく壁にいた蜘蛛をつかみ、父から「二度と出すな!」ときつく注意される。ステファン:「あの子のペットなんだ」。シャルロット:「なら、最低のペットね。あちこちでフンをして、きっと、そこら中で卵産んでるわ」。「駆除業者を呼んで、部屋を消毒させるから」。「それじゃダメよ、引っ越さなきゃ!」。そう言うと、「私もう限界」と言って猫を抱いて出て行く。ステファンがシャルロットを宥めようと電話をかけている間、ミミは炒めたポテトを空中に放り投げて口でキャッチしている(2枚目の写真)。電話を終えた父は、「行儀が悪いぞ! フォークを使えと言ったろ」と叱る。ミミは、手でポテトをつかむとフォークに刺し、「どうして出てった?」と訊く。「一番よく分かってるはずだ」。「恋人、一人?」。「恋人は、一人に決まってる」。「まちの中、女の人 たくさんいる。見えない?」。「誰かを愛すると、説明しにくいが、彼女しか目に入らない。他人は、まるっきり見えなくなっちまう」。「ボク 見えるよ」〔伏線〕。父は、「明日は別行動だ。預かってもらう」と言う。預かり先はリシャールの家。
  
  

リシャールの家は、映画では、ステファンのアパルトマンより下流のセーヌ河畔とだけしか分からない。ノベライズではヌイイ地区(Neilly-sur-Seine)と書かれている。アパルトマンの位置も間違っていたので、正しいかどうか不明だが、ヌイイ地区は凱旋門と副都心ラ・デファンスとの間に位置する。セーヌ川はブーローニュの森を回りこんで180度向きを変えて、このシャン=ゼリゼの延長線上の大通りと交差するが、ちょうどその両側がヌイイ地区だ。ただ、映画の設定では、リシャールの家は河岸に面しているので、それに該当する場所はグランド・ジャット(Grande Jatte)島しかない。ステファンのアパルトマンからは、川沿いに15-16キロある〔陸路だと6キロ以下。如何にセーヌ川が蛇行しているか分かる〕。こんなに拘るのは、後で、ミミがカヌーでこの区間を漕ぐからだ。下流に向かって漕ぐので時速8キロとして2時間ほどで行けてしまう。しかし、実際には、午前中から漕ぎ始めて到着するのは暗くなってからなので、もっと遠くまで行ったハズだ。それなら納得できる。リシャールが余程金持ちでない限り、ヌイイのようなパリ屈指の高級住宅街に一軒家を持てるとは思えないからだ〔そんなに金持ちなら、1000万円ほどの損失で、家を抵当になど入れない〕。さて、リシャールの家に連れて来られたミミ。奥さんが2人の子供に「2人とも挨拶して」と言う(1枚目の写真)。挨拶を交わしたまでは良かったが、2人が見ていたTVのキャスターが「お早う、皆さん」と言うと、ミミはそっちにも「お早う」と話しかける。それを見た弟は、「テレビに しゃべってる」と笑う。奥さん:「ミミの国には テレビがないの」。「わ、ダサ~」(2枚目の写真)。姉の表情も面白い(3枚目の写真)。2人の母は「大丈夫、きっとうまくいくわ」と言うのだが…
  
  
  

そこに、出かける用意を整えたリシャールが登場。ミミが、熱帯魚の入った大きな水槽を見ているので、「いいだろ? 奮発したんだ」と自慢する(1枚目の写真)。その先に、ミミがセーヌ川を見つけるシーンがある。家の目の前を川が流れている。父は、「セーヌ川だ。遡ってくと、エッフェル塔に着く」と教える〔伏線〕。奥さんが、「お庭を案内するわ、ミミ・シク」と言うと、弟は笑い、姉は「ほんと、変てこりんな名前」と批判。リシャールは「12歳で、ああも生意気とはな」と嘆く。奥さん:「全寮制の女子校に入れないと」。父は、「庭のどこかに吊るせば ハンモックで寝ます」と言って、畳んだハンモックを渡す。そして、ミミに「いい子に してろよ」。「ワカテペ、バブーン」。手を叩き合う。ステファンとリシャールが向かったのは、ロシア人のホテル。そこでアタッシュケースに詰まった現金を見せられる。弁護士:「ご覧の通り、約束を守る人なんです」(2枚目の写真)。リシャールが「さっそく 数えましょう」とアタッシュケースに手を突っ込むと、ロシア人は蓋をバチンと閉める。手を挟まれて痛がるリシャールを、ロシア人は罵(ののし)る。ステファン:「ひどいな! いったい何と?」。弁護士:「信用されてないと 思ったのです。数えるなら、取引はなかったことに」。リシャールは、「なら、数えません。結構です」と引き下がる。そうした同僚の態度を見たステファンは、彼を廊下に連れ出し、「頭が おかしいんじゃないか? ロシア・マフィアの金だぞ。中止する」ときっぱり反対する。「じゃあ、どうする? もう、110ドル〔約3170万円の損失〕まで下がったんだぞ!」。「俺たちで 被る。俺は借金。お前は家を抵当に」。「俺には子供がいるんだ!」。「俺にも いる」。「ウチの子は、ソニーやニンテンドー。バナナやキャット・フードじゃ済まない」。
  
  

リシャールの家では、奥さんが、「今日は、お魚よ。お魚好き? ミミ・シク」と話かけている。ミミは、調理前の冷凍の魚をかじり、「ひどい魚。食べない」と言ってキッチンを出て行く。姉は、自分の部屋で彼氏に電話している(1枚目の写真)。「パパの上司の子供が来てるけど、すっごい変なの。庭で寝たりなんかして。遊園地に、一緒に行かされる」。そこに、「ソフィー、ジョナタン、お昼ですよ」の声。母が、先に来た弟に、「ミミを呼んできて、お庭よ」と言う。戻って来た弟は、「ママ、ミミが悪いコトしてる!」。それを聞いた母が庭に出て行くと、ミミは芝生の上で火を起こし、串刺しにした魚を食べている。「何 食べてるの?」。「これ、魚。おいしい」。「どこにあったの?」。「家の中」。その時、弟が飛んできて、「ママ、それパパの熱帯魚!」と叫ぶ。母は、「大変! きっと、心臓麻痺よ!」と動転。弟が姉に、「野蛮人が、パパの熱帯魚 食べた!」と叫ぶと、姉は、「やるじゃない。せいせいした!」。母は、「ミミ、悪い子ね。子供たちのパパが悲しむわ。あの人、熱帯魚クラブにも入って 可愛がってたのに」と叱るように言うが、ミミは、「心配ない。魚、川にいる」と言い、魚を食べながら、「食べる?」と尋ねる(2枚目の写真)。
  
  

パリ市内の遊園地(Foire du Trône)。売り物は「幽霊列車」。ただし、出てくるのは、入口にいる大きな動くゴジラの置物が象徴するようにジャングルでの恐ろしいもの。そのゴリラの前で「バブーン、バブーン!」と叫ぶミミを見て、ソフィーの彼氏は「何だ、あれ?」。ソフィー:「変人 そのものよ」。彼氏は、「邪魔なんだよ、こっち来な」と言って、回転しながら上下する遊具まで連れて行き、「面白いぞ、乗ってみな」と勧める。「乗り方、知らない」。「こうやって座るだけだろ。お前、脳ミソあんのか?」。ミミの親指が頚部を強く押すと 彼氏は金縛りになったように動けなくなる。ミミは、幽霊列車に乗って待っているソフィーの元に駆けつけると、彼氏の替わりに乗り込む。「ボク、いっしょ」(1枚目の写真)。館内に入ると、2人をまず襲ったのがコウモリ。悲鳴を上げるソフィー(2枚目の写真)。ミミは、コウモリをつかんで投げ捨てた。「だいじょーぶ、ボクが守る」。大きな蛇が寄ってくると、ミミはすかさず噛み付く(3枚目の写真)。腕に蛇をつけていた係員は、腕を噛まれてケガをする。ゴリラが現れると、横に生えていた枝を折って頭をぶっ叩く。ワニに対しては、枝で頭を叩き、腹を突く。ワニの格好をしていた係員は、あおりを食らって空中に飛び出す。ソフィーは笑いこけ(4枚目の写真)、ミミのことが気に入る。
  
  
  
  

リシャールは、社長にロシア人から受け取った現金を見せている(1枚目の写真)。「現金で80万ドル? 汚い金に決まっとる!〔マネーロンダリングのこと〕。リシャールは、嘘を付いて弁解する。「ステフも信用しました」。その場にステファンがいないので不審に思って訊くと、「いませんが、署名は ここに」と、捏造したサインを見せる。リシャールのことなど てんで信用していない社長も、ステファンが了承したのならと、それ以上は詮索しない。一方、ステファンはシャルロットとの仲を再構築しようと、エセ宗教の集会にいた彼女を無理矢理引っ張り出し、チャーター船上でのディナーに誘う。このシーンも映画ならではのトリックが使われている。最初は、ノートル=ダム大聖堂の背面が映り、船はシテ島の最上流端からさらに上流へと向かう。しかし、次のカットでは、船は正面に見えるポン=ヌフへと進む(2枚目の写真)。右岸に船が見え、左岸に建物が見えるので、下流側から近付いていることが分かる。ところが、ポン=ヌフはシテ島の最下流端に架かる橋。島から上流に向かって離れていく船が、瞬間移動して、下流から島に接近していく船になっている。パリの住民なら奇妙に思うハズだ。因みにポン=ヌフは1606年に完成したパリで一番古い橋。しかし、ポン=ヌフ(Pont-Neuf)の“Neuf” は「新しい」という意味。この橋が出来た当時は、パリでは最新の橋だったので付けれた名がそのまま残っている。南フランスの大都市トゥールーズでも、現存最古の橋はポン=ヌフ(1632年)だ。逆の場合もある。ポン・ヴュー(Pont Vieux)〔“Vieux”〕は「古い」という意味〕が最古の橋の場合もある。最も有名なのは南フランスの古都アルビにあるポン・ヴュー(13世紀中葉)だ。脱線したが、船上の2人の会話の一端。「世界が、まるで違うのよ。あの子は可愛いけど、文明は2千年は遅れてる。東洋は沈黙、西洋は雄弁。あの山猿君は 西洋人だから騒がしい。村で お仲間と一緒の方が幸せじゃない? 『庭のカップ』や『コーヒーのイス』さんと」〔最初は『コーヒーカップ』 と『庭のイス』だった〕。彼女は、ミミを追い出したくて仕方がない。「シャルロット、2人の話をしよう。じき、離婚の書類も揃うし、もっと楽しまなきゃ。ミミ・シクは、リシャールの家だ。心配ない」。そのリシャールの家では、ミミがセーヌ川で魚をすくい獲っている(3枚目の写真、矢印の先はバケツ)。食べてしまった高価な熱帯魚の替わりだ。場面は少し前後するが、酔っ払って帰ってきたリシャールが、様変わりした水槽を見て(4枚目の写真)、「餌の やり過ぎじゃないか? ダイエットだぞ」と言うシーンは笑わせる。泳いでいる魚の大半は、背びれの形と鱗の光沢からAblette(コイ科の淡水魚)であろう。
  
  
  
  

魚を獲るミミを見ていたソフィーは、終わった頃 庭に出て行き、ハンモックを覗いてみる。ミミが、「眠れないのか?」と木の上から訊いてくる。「猿みたいに登るのね。でも、文明化された女性が、それに惹かれると思ったら…」。ミミは猿のような声を出して ソフィーを追い回す。ソフィーも楽しんで逃げている。捉まったソフィーが、「君には私の心はつかめない」とそそらせるように言うと(1枚目の写真)、ミミは、「ボクが、君を狩ってる? 君が、ボクを狩ってるんだろ」と自信たっぷりだ(2枚目の写真)。酔っ払った夫を車で連れ帰った妻は、娘とミミがハンモックで仲良く眠っている(3枚目の写真)のを見て大騒ぎ。妻は夫の酔いを覚まさせ、シャルロットと船に乗っているステファンの元にも緊急電話を入れる。ステファンは、「そんな、あり得ない」と言うが、結局、「分かったよ。今すぐ行くから」とディナーを中断してリシャールの家に向かう。家に着いたステファンを待っていたのは、ソフィーの母のヒステリックな文句。「ハンモックで 一緒に寝てたのよ。いったい何をされたやら!」。「考え過ぎだよ。抱き合ってただけさ」(4枚目の写真)。今度は、リシャールが、「娘はやられなくても、俺の熱帯魚は食われたぞ」と責める。母:「妊娠したら、どうなるの?!」。「君は、お祖母さんだ」。「茶化さないで!」。「キスじゃ、妊娠しないよ」。家から出た父は、ミミに、「ダメだぞ、ミミ。ここじゃ、12歳の女の子と同じハンモックで寝ないんだ」と叱る。「頼まれた」。「それ、ほんとだろうな?」。「ボクの目 見て」。それを見て、父は信じることに。車に乗って帰ろうとする2人に、リシャールは「魚 忘れたぞ」と言って、フロントグラスに魚を投げつける。ミミは、その魚を大事に持って車に乗り込む。「魚、とても おいしい」。
  
  
  
  

家に帰る途中の道路脇で、火を焚いて魚を焼くミミ。父は焼いた魚を食べつつ話しかける。「彼女には、もう会えん。両親が許さない。悲しむなよ。村に戻れば、幾らでもいるんだろ?」(1枚目の写真)。それに対し、ミミの返事は、以前「ボクは見えるよ」と言っていた時とはまるで違っていた。「ボクが好きな子は 一人だけ。彼女しか見えない。ぜんぜん」(2枚目の写真)。「残念だが、彼女は忘れろ」。「パリクー出てった時、忘れた?」。「最初は、頭から離れなかった。でも、次第に薄れ、ある朝目覚めると新しい人生があり、彼女は地平線のかなたに小さくなった。輝いてはいたけど、それは思い出でしかなかった」。「ボクの頭の中、彼女だけ」。その時、シャルロットから電話がかかってくる。「私、もう2時間も待ってるのよ! やっぱり、私よりあの子が大事なのね? もう、あなたの家には戻らないわ」。それを漏れ聞いたミミは、「忘れたら?」と言う。これが、ステファンの心がシャルロットから離れる第一歩となる。翌朝、リシャール家のキッチンでは、弟が「ソフィーは寄宿舎!」と叫んでからかっている(3枚目の写真)。ソフィーが強制的に母の実家のあるボージュ地方〔パリの東南東250キロの田舎〕の全寮制女子校に行かされそうになることが、この後の展開を変える大きなきっかけとなる。
  
  
  

ミミと父は、その晩をバルコニーのハンモックで一緒に過した。朝になり、リシャールからの緊急電話で起こされる。「分かった。すぐ行く」。ミミは、電話で目が覚め、「きのう言った。『薄れた』って。でも、ソフィー、ずっとココ」と言って、自分の顔を指す。「彼女のパパに話してみよう。1時間で戻る」。「1時間って?」。「ほら、エッフェル塔。太陽が塔に着いたら1時間だ」〔先に述べた、アパルトマンの位置に関わる重要な言葉〕。車で、リシャールとの待ち合わせ場に着いたステファン。そこで、ロシア人との食事の話となり、「まさか、売ったんじゃ?」と訊く。「売れて万歳だろ。相場は今日も急降下。選択肢はゼロ以下だ」。「万歳だと? サインしてないぞ!」。「俺がサインして、金を受け取った」。「サインを偽造しただと?」(1枚目の写真)。「偽造じゃない。俺や、あんたと奥さん、俺の家族と家のためにサインしたんだ。船が沈んでるんだ。誰かが何とかしないと。こんなことパニくるようなら、一緒にやってけないな」。「お前とは、今後一切組まん。このバカ、訴えてやる。家にサヨナラするんだな!」と首をつかんで激怒する。急に弱気になったリシャールが、「せめて、昼食だけ…」と頼むが、「一人で行け!」。ところが、そこに、運悪く弁護士が到着。ステファンも仕方なく同行することに。怪しげなレストランでの会話。弁護士:「ある朝、クシノコフさんは、友人から立派な豚を買いました。その友人は、握手をしながら、いい買い物だと保証しました。その夜、豚が高熱を出したんです。クシノコフさんは返金を求めましたが、断られました。そこで、不本意ながら、左手の指をすべて切り落としました」。ロシア人は、指をハサミに見立てて切る動作をしてみせる(2枚目の写真)。弁護士はさらに続ける。「クシノコフさんは、あなた方も同じだと、不快に思われています」。リシャールが「いいえ、それは違いま…」と言いかけると、フランス語がほとんど話せないハズのロシア人が急にフランスでわめき始める。この部分の訳は、日本版のビデオの訳が気に入ったので、利用させていただいた。「たわけ! 貴様らケツまくる気か!」。ステファン:「フランス語 話せるんですな、クシノコフさん」。弁護士は、「この記事を読まれましてね、マルシャドさん」と経済紙の一面を見せる〔大豆大暴落〕。ロシア人は、「耳揃えて、金返さんかい! 腐った大豆は全部返したる! さもなきゃ、指、ちょん切ったるでぇ!」と怒鳴ると、ナイフを持った手でリシャールの腕をつかむ。「さあ、どないや? 今日中に、金 返すんか? それとも、指入りサンドか! 金か血か選べ! はよう、返事せんかい!」。
  
  

寄宿舎に行きたくないソフィーから、ミミにSOSの電話が入る。最初、ミミは電話の取り方が分からない(1枚目の写真、矢印は電話機のアンテナ→逆に持っている)。ようやく、「ソフィー?」。「ミミ!」。そこに母が入ってくる。「ソフィー、電話を直ちに止めなさい」(2枚目の写真)。「ミミ、私、全寮制の…」。そこで電話は切れた。心配になったミミは、1時間待つという父との約束を破り、リポ・リポの戦士の姿になると、アパルトマンを出て行く〔出発したのは確実に午前中〕
  
  

ミミは、セーヌ川の河岸の一段下がった位置に付けられた係船用の歩道を、ソフィーの家のある「下流」に向かって走る(1・2枚目の写真)。撮影場所は、イエナ橋からビル=アケム橋にかけての右岸なので、最初の頃述べたアパルトマンの実際の位置と合致する。ミミは、そこで1隻のカヌーを発見。さっそく借りて漕ぎ出す(3枚目の写真)。背後に映っているのはルエル鉄道橋。通っているのはRERのC線の2階建て電車。その先では、白鳥の島の下流部先端に建つ自由の女神像の前を漕ぐミミの姿も映る(4枚目の写真)。因みに、この自由の女神像は、1876年にフランス政府がアメリカ建国百周年を祝って贈ったニューヨークの自由の女神像の4分の1のサイズで、フランス革命百周年に、返礼として贈られたもの。東京の第三台場を望む公園に1999年に建てられた自由の女神像はこの正規のレプリカ(参考まで、少し前に私が撮った写真を5枚目に付ける。クローズアップもあるが、敢えて品川第三台場の全景の入ったものにした)。もう1つコメントしておくと、自由の女神像の背後には、パリらしくない高層ビルが並んでいる。これについては、専門的になるが、6枚目の「パリ市の建物の高度規制図」をご覧いただきたい。赤い★印がエッフェル塔、○印が自由の女神の位置。○印の右側がオレンジ色になっているが、この部分にだけ高層ビルが建てられる。パリ市の中心は淡い黄色になっているが、ここでは25メートル以上の高さの建物は許されない。パリに行くときれいな街並みが見られるのはこのためだ。
  
  
  
  
  
  

ミミは、受話器をきちんと置かずに出てきたため、父が電話をかけても通話中。リシャールは、ロシア人に現金を1人で返すのは心もとないので、「ステフ、待って! 頼むからいてくれよ」と言うが、ステファンはミミのことが心配なのでアパルトマンに帰る。そして、帰ってみれば、無駄足だったことが分かる。一方、リシャールの家では、ソフィーが、寮には入るのは嫌だと、自室に閉じ籠もっている。そこに、ミミがやってくる。ソフィーはミミをベランダから入れると、ドアに鍵をかけ、抱き合う。ミミは、「川 下って、ここに導かれた」と、どうやって来たかを話す(1枚目の写真)。その頃、弁護士からリシャールに電話が入り、「ひと気のない所で会いたいと、言われてます。駅の公衆トイレで」。「了解です。30分で行けます」。幸い、ステファンも「後、5分で着く」。しかし、ミミとソフィーはベランダから壁を伝って脱出。ソフィーは、1階から家に入ると、中に置いてあった80万ドルの現金入りのアタッシュケースを奪って(2枚目の写真)、ミミと一緒に逃走する。それを、ドアを体当たりで破ってソフィーの部屋に入った両親に見つかる。母:「駆け落ちよ!」。弟:「やった、姉ちゃん、カッコいい!」(3枚目の写真)。母:「ケース、持ってるわ!」。リシャール:「ケースを 盗られた!」。弟は「逃げろ、姉ちゃん」と言って、リシャールに引っぱたかれる。「坊やを、ぶたないで!」。「お前の躾が悪いんだ!」。ロシア・マフィアに返すお金はなくなり、娘は駆け落ち、まさに「最低最悪」だ。そこに、ステファンが車で到着。リシャールは「お前のガキが、娘と金を盗んだ!」と拡大解釈。2人で追いかけると、ミミとソフィーは、リシャールのモーターボートでセーヌ川に逃走。2人は、ミミが残したカヌーで追いかけることに。「こんなモンじゃ、追いつけん!」。「何とかなる! 燃料が カラなんだ」。
  
  
  

モーターボートはガス欠で動かなくなるが、ミミは、「岸に上がって野宿する。太陽 出たら、出発」と先導する。枝を集めた2人。ソフィーが石を捜して来て、「これで、火 起こせるでしょ?」と言うと、ミミは、「それ よくない。こっちが いい」と言って、以前 秘書からもらったライターを見せる(1枚目の写真)。焚き火ができると、ミミはソフィーの顔にペイントを施し(2枚目の写真)、「君も、インディオ。名前 選んで?」と訊く。「付けてくれる?」。「ウクミ。広い川に降る雨」。「素敵ね」。キスする2人(3枚目の写真)。監督が、「女の子とキスする方が、シャン=ゼリゼを裸で歩くより、よほど難しいらしい」と笑ったシーンだ。一方、追いかけているカヌーの中では、2人が喧嘩。「全部、チビ猿のせいだ」。「全部、お前のせいだろ! 今度 猿と言ったら放り出すぞ。金が何かも知らんのに、盗むと思うか?」。「悪賢いチビ猿だから、早く学ぶさ」。ここで、櫂で一発叩かれる。そうこうするうち、2人は、岸辺のモーターボートを発見する。
  
  
  

焚き火のそばで寄り添って寝ていた2人(1枚目の写真)。リシャールの「ソフィー!」、ステファンの「ミミ!」と呼ぶ声で目が覚める。「パパたちよ」。「探しに?」(2枚目の写真)。ソフィーは、「目当ては、どうせ、この汚れた金よ」と言って、アタッシュケースを捨ててミミと逃げる。お金を確保したリシャールは、「ソフィー! ひっぱたかれたいのか!」と強気に出る。それを聞いたステファンは、「黙ってろ! いつもぶってばかりだから、逃げたんだろ! それでも、父親か! お前がクソだからだ! 女房がスネるのも、子供たちがグレるのも、俺と同じ服を着るのも… この20年 尻拭いばかり させやがって!」(3枚目の写真、同じ服と、写真では見えないが、同じネクタイをしている)。「そうさ! 俺はバカだから尻拭いが必要だし、お前と同じ服しか着れんし、ガキを叩くんだ!!」とリシャールも切れる。最後は、2人とも冷静になり、「警察に頼んで、何か しでかす前に発見しないと」ということになる。
  
  
  

2人が家に戻ると、そこにはロシア人が待っていた。ステファンが、「金ならある、全額だ」とアタッシュケースを見せる。弁護士は、「結構。後は、息子さんの指を味見されたいと」と言う。ロシア人の部下が、大きなハサミで弟の指を切断しようとする(1枚目の写真)。リシャールは、「息子に触れるな。俺が、そんなこと許すと思うのか?!」と大きく出るが、ロシア人に頬を思い切り殴られてタジタジ。ステファンはアタッシュケースを渡し、ロシア人が中味を確認する」。リシャールは、「信用しないなら、取引きは止めだ!」と余分なことを言い、また「うるせえ!」と殴られる。幸い、約束の30分より相当遅刻したにもかかわらず、ロシア人の一行は、何事もせず引き揚げていった。制裁を受けたのは仲介役の弁護士だけ。親指と小指を残し、左手の3本の指を切り落とされたのだ。リシャールは、さっそく警察に捜索依頼の電話をかける。
  
  

ミミとソフィーは警察に保護された。迎えにいったステファンに、刑事は、会わせる前に、「親の怠慢で、しょっぴいてもいいんだ。いい年の子を、裸でウロつかして」と苦情を並べる。控室で、2人を迎えるミミとソフィー(1枚目の写真)。「一緒に帰ろう」。ソフィーを振り返るミミ。リシャールも、「パパは怒ってないよ」と言う。それを聞いた刑事は、「おいおい、甘すぎるだろ! もっと、きつく言ってくれなきゃ!」と文句。ミミは、父に寄って行くと、「バブーン、帰りたい、リポ・リポ、ボクの村」と言う。刑事が、「帰せ、帰せ。そこが居場所だ。変わりモンが一人減る」と憎まれ口を叩く。ミミ:「うるさい!」〔前、父に教わった〕(2枚目の写真)。「黙らせんと、タダじゃ済まさんぞ」。今度は、父が「うるさい!」。「親が親だから、こんな問題児が…」とつかみかかろうとした刑事の喉に、ミミの親指が食い込む(3枚目の写真)。初めて見た「技」に驚く2人。ミミは、「押した」と言って、喉を押す格好をする。そこに別の刑事が入って来て、「相棒に何した!?」と詰問。父は、「私の息子が… 親指でインディオ流に…」と言いつつ、刑事の首に親指を当てる。何も起きない。「ぶち込んで欲しいか?」。「これ、全然 効かないけど、なぜなんだ?」。ミミは、「親指ダメなら、こうする」と言って、刑事の股間を蹴る(4枚目の写真、赤い矢印は父の効果のない親指押し、黄色の矢印は股間蹴り)。「行くよ、バブーン」。シーンとしては面白いが、身元はバレているので、後どうなったのだろうか?
  
  
  
  

空港で。ミミが、小さな吹き矢を父に渡しながら、「ハエ 刺せたら インディオだ」と言う(1枚目の写真)。「いっぱい練習するよ。いつか一緒に狩りをしよう」。「リポ・リポ、もう来ない」。「行くよ。できれば、すぐに」。「すぐ? ボク、信じない。いつも、『ぎむ』の仕事。ソフィーにも、『ぎむ』ある?」。「ソフィーは、きっと 手紙をくれる」。「ボク、読めない」。「パリクーに頼め。きっと、教えてくれる」。カラカス行きの飛行機のアナウンスがあり、「乗ったら、開けて」と紙包みを渡されたミミは、「ワカテペ、バブーン」と元気よく去って行く。ステファンがアパルトマンに帰ると、そこには、シャルロットだけでなく導師もいる。「しばらく 一緒に住んで下さるの。私たち2人の調和を取り戻すために。本人から説明してもらうわ。呼んでくる」。うんざりしたステファンは、縁を切ることに決め、さっさと逃げ出す。ステファンは会社に行くが、そこは狂乱状態だった。一時は110ドルまで下落していた大豆相場が210ドルまで上げたのだ〔約3000万円の利益〕。リシャール:「遂に やった! ボロ儲け! 俺たち、大金持ちだ! ばんざーい!」(2枚目の写真)。社長も大満悦。「鮮やかだ! 見事の一語に尽きる!」。そして、「わしまで騙しおって、このポーカーフェイス」(3枚目の写真)「何で、輸出禁止を知ってた?」。答えたのは、リシャール。「そりゃもう、プロですから」。ここで、予定していた人物の到着が知らされ〔ステファンの新しい秘書〕、「マルシャドは残って」とリシャールは追い出される。社長:「わが友よ、昇進だ。ストックホルム支局長に任命する。悪いんだがモンティヤック〔リシャールのこと〕も一緒だ。あのアホチビを 二度と見たくない」。
  
  
  

再び空港。今度は、ストックホルムに赴くステファンとその秘書、リシャールの一家4人が一緒だ。ラウンジでは、秘書が一家に、「ストックホルムは いい所で…」と説明している(1枚目の写真)。しかし、肝心のステファンの姿はどこにもない。彼がいたのはトイレ。そこに1匹のハエが。ステファンは吹き矢をセットすると、思い切り ひと吹き。針のような棒は、見事にハエを貫いた。彼は、それを手に持って意気揚々とリシャールの元に向かう。ラウンジでは、ストックホルム行きの最終搭乗案内が流れている。リシャールは、「ステフめ! 搭乗券持って どこ行った! 最低最悪だ!」。彼には、上司という認識ができていない。そこに、ステファン登場。「リシャール、やったぞ!」と刺さったハエを見せる(2枚目の写真、矢印はハエ)。
  
  

リポ・リポで。ミミが、母の前で、たどたどしく本を読んでいる。ラ・フォンテーヌの『寓話』だ。その時、携帯電話が鳴る。これはミミが帰り際に父からもらったものだ〔ミミがもらった箱の中には、電話機しか入っていなかった。これは奇妙な話だ。アメリカのリメイク版では、ちゃんと太陽光による充電パネルも入っている。そうでなければ、電気のないリポ・リポで携帯電話は使えない〕。ミミが電話に出ると、父が、「ミミ! やったぞ! 吹き矢でハエを射止めた」と話す(1枚目の写真)。「ウソ、ダメ!」。「信じない? 見せに行こうか?」。「いつ? あとで?」。「いや、今すぐ」。その時、子供たちの「バブーン、バブーン」という声が聞こえる。ミミが小屋から飛び出ると、岸辺には父の姿があった。駈けていったミミは、父に飛びつき、勢い余って体が宙に舞う(2枚目の写真)。父は、吹き矢を取り出し、「どうだ?」と渡す。それを見たミミは、「インディオだ!」と請合う(3枚目の写真)。「リポ・リポに住む?」。「しばらく一緒にいる。狩り、教えろよ」。
  
  
  

「ソフィー、元気?」。「ああ、そう思うぞ」。そう言う父の目は、こちらに向かってくるモーター付きのボートを見る。そこに乗っているのは、リシャール一家だ。それに気付いたミミは、「ウクミ!」と叫ぶと川に入って行き、ソフィーは「ミミ!」と叫んで川に飛び込んだ。川の中で再会を喜び合う2人(1枚目の写真)。夫の存在に気付いた「パリクー」が、「ステフ」と声をかけると、ステファンは手を上げて応える(2枚目の写真)。その手には、ミミへのお土産として持ってきた鍋が握られていた。意識せず行ったこの行為は、将来、2人の「ヨリが戻る」ことを意味しているのだろうか? ミミとソフィーは熱いキスを交わす(3枚目の写真)。ハッピーエンドはいいのだが、スウェーデンに行くハズの父が、どうやってギニアまで来たのか? リシャール一家も一緒となると辞職したとは思えないのだが…
  
  
  

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